窓の外に広がる名古屋の街は、今日もどこか忙しない。高層ビルの隙間を縫うように
強風が吹き抜け、遠くではクラクションが小さく重なり合っていた。その音を背に、
俺は仕事の手を止める。理由は明白。そう。今日も東京ではLOILOのライブ。
距離にして数百キロ。物理的には遠い。けれど、不思議と“遠い”とは感じていない。
むしろ、同じ時間の流れの中にいることが、妙にリアルで胸の奥がざわつく。
『そろそろか(´-`*)』
そう思った瞬間、俺はいつものように席を立つ。
「まえきん、テラスにいくの?もしかして今日はいつもの、アレ?」
背後から聞き慣れた声が飛んでくる。軽い調子の、いつものやり取りだ。
俺は振り返り、少しだけ笑って答える。
『あぁ、ちょっと休憩がてら、いつもの応援にな。悪いが少しだけ外させてくれな😄』
「ん、りょーかい😄」
今ではもう慣れっこのように答えてくれる。ありがたい。敢えてエレベーターは使わず、
階段で最上階まで上がる。扉を押し開けると、屋上の風が一気に身体を包み込んだ。
テラス席。名古屋の街並みが一望できるこの場所はかなり気に入っている空間だ。休憩で
コーヒーを飲むには最高の場所だ。しかし今日の俺にとっては、ただの休憩場所ではない。
ここは、LOILOと繋がるもうひとつの特別な場所へと変わる。
手すりに寄りかかり、空を見上げる。同じ空。東京の空も、きっとこんな色をしている。
その下で彼らは音を鳴らしている。歓声が上がり、光が揺れ、音が重なる。そのすべてを
俺はここから想像するしかない。でもね、不思議と寂しさはない。むしろそこにあるのは
静かな高揚感。ポケットからスマホを取り出し、画面を開く。SNSには現地にいるLOILOの
ファン仲間たちのXポストが流れてくる。短い言葉の連なり。それだけで、十分。
ちゃんと、届いてる。LOILOの音が、想いが、確かに誰かの心を震わせている。
それを知れるだけで、すごく嬉しいことじゃないか。そうだろう?
『……はじまったか(´-`*)』
思わず、声が漏れる。風に乗って、誰にも聞かれない程度の小さな声。遠くにいるのに、
何もできないはずなのに、それでも応援したいと思ってしまう。この衝動は理屈じゃ
説明できない。ただ、LOILOが好きだから。もうそれだけで十分だろう?
ステージに立つLOILOの姿を、頭の中で何度も再生する。汗をかきながら、飛び回りながら
必死に音を鳴らす姿。ファンと一体になって、空気を揺らす瞬間。その一つひとつが、
まるで自分のことのように誇らしい。

LOILO Xポストより
『今日も、最高のライブに(´-`*)』
そう呟いて、目を閉じる。ほんの数秒。その間に、確かに“繋がった”気がした。
目を開けると、さっきと同じ景色が広がっている。何も変わっていないはずなのに少しだけ
世界が鮮やかに見えた。ポケットにスマホをしまい、背筋をぐーっと伸ばす。
『さて、戻るか』
もう少し、やるべき仕事がある。俺は俺の場所で、やるべきことをやるだけだ。
LOILOがステージで戦っているように、俺もこのオフィスで戦う。それだけの話。
扉に手をかける直前、もう一度だけ空を見上げた。
『また、来るわ😌』
誰に向けたわけでもない言葉を残して、テラスを後にする。階段を下りながらさっきまで
止まっていた思考が、ゆっくりと動き出しているのを感じた。厄介な短納期の交渉も、
部下たちのフォローも、あらゆる人からの無茶ぶりも、きっとまたすぐ捌ききれるさ。
席に戻ると、ちらっとこちらを見る。
「応援、おわった?」
『あぁ、バッチリな😄』
そう答えて、自席に座る。不思議なもんだ。遠くにいる誰かの頑張りが、こんなにも自分を
動かしてくれるなんてね。LOILOがライブをする日。それは名古屋オフィスの一角で俺が
LOILOを応援する日を意味する。LOILOと出会った3年前、俺はその皆さんに救われた。

たとえどんなに仕事で辛くても、LOILOの音楽を聴くと今日もまた頑張ってみよう。
そう思えるようになった。LOILOの音楽が自分の中での確かな支え。それは今も変わらない。
たとえライブにいけなくとも、俺はずっとLOILOの…ファンだから。